Stray Penguin -実録 SV650 ABS ブログ-

ありものポン付けだけじゃつまらない。ジャンル・素材・クロスオーバー。
よく言やコダワリ。哀れや執着。彼れに見えるは蓮の花〜。
そのまんま使えん師 今日もゆく。

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プロローグ

SV650A 2BL-VP55B 2020年式
2020/3/17 新車購入
エンジン型式: P511
カラー: マットブラックメタリックNo.2(YKV)
標準タイヤ: ダンロップ SPORTMAX ROADSMART III 120/70ZR17M/C(58W)・160/60ZR17M/C(69W)

前車VTR250からまったく違和感なく乗り換えられた。排気量とパワーを差し引いたとすれば、Vツインの鼓動感も高回転の滑らかさもVTRの方が上で、ホンダMC15Eはやはり名機だったと痛感する。とはいえ、決してSV650が期待外れというわけではない。このエンジン、Vツインの割りには極低速トルクは意外と薄めで、気持よく走れるのは3000rpmから。パルス感があるのは3000〜4000rpmの間。それより手前では、殊にノーマルマフラーでは、ドコドコというよりも「ベチベチ」といった感触であまり心地よくはないが、それでも回転を持ち上げていく底力はある。上は、パワーピークの8500rpmを超えてレッドゾーンの10000rpmまで淀みなく回る。面白いかどうかを別とすれば峠を3速または4速固定で攻めることだってできる。下ろしたての頃は、7500rpmあたりから少し振動が増える感じがあったが、1000kmからの2次慣らしで積極的に回すように心がけたところ、オドメーターが2000kmを跨ぐ頃には気にならなくなった。加速時には、大型バイクなりにニーグリップを怠らずにいないと置いていかれそうになることもあるがパワーの出し方はライダーの意のままで、このバイクを「獰猛」と謂うライダーがいたら、大型二輪免許を取るのに苦労した口ではなかろうか。「もう少しで使い切れる」と思い上がらせてくれる楽しさがこのエンジンにはある。猛獣を捩じ伏せることに喜びを求めるライダーには向かないかもしれない。

コーナーでは、気難しいというほどではないにしても、ライディングの基本をサボると思うように曲がってくれない。気持よく曲がるには、外足のステップを前方へ押し出す反作用で尻がイン側後方へ自然とずれる例の感覚は必要だし、そのタイミングが早すぎると愚直に切れ込み過ぎになる。しかし、乗ったラインに吸い付くタイプのハンドリングではなく、いつでも修正がきく。加減速時のピッチングを抑える味付けのサスペンションは、浅い凹凸は比較的よく吸収するが、大きな入力に対しては、良く言えば踏ん張る。デフォルトでは5段階のうち真ん中になっているリヤショックのプリロードを自分は1段緩めているにもかかわらず、往々にして突き上げを食らいがちだ。荒れたコーナーでは、リヤタイヤにエンジントルクを注いで地面に押し付けるのに加えて、足の裏から荷重を抜いて尻に体重を集めてさらにリヤ荷重を高めてやると、跳ねることなくコーナーを抜けることができる。それ以上のギャップは逆に尻を浮かせてイナすしか仕方がない。サスについては前評判で跳ねるハネると聞いていたが、これはこれでありだ。

どちらかといえば体重移動を阻む形状の"陥没"シートは、横方向の体重移動に際しては、扁平部左右の絶壁が豆腐の角でバランスをとっているような不安定さをもたらす。高速道路のような単調な巡航では、厚みがやや足りないし、タンクぎりぎりに座ろうものなら、ナタで斜めに削げ落としたような先端形状により内股にへんな隙間ができて尾てい骨あたりに圧が集中するため同じ姿勢は続けられない。それでも、ワインディングを走っている分には、自ずと小さめに抑えられたとしても尻の動きがある限り、意外とケツ痛にはなりにくい。タンデムシート手前の"しゃもじ"のようなスロープが尻を咥え込んでニーグリップの代わりに加速Gを受け止めてくれることもあって、2時間やそこらは走り回ることができる。

山道もぶっ飛ばせるし、ちょっと近所へ牛丼食いに行くにも心が躍る。そんなバイクだ。いろいろとおかしなところもあるが他に代わるものがない、これを総じて鈴菌と呼ぶのだろう。