Stray Penguin -実録 SV650 ABS ブログ-

メンテ & カスタム

アンコ盛り で ハイシート化 [2022/4/6 ODO=13,160km]

SVのシート、前後の着座位置の自由度がじつはほとんどない。はじめからアンコ抜きされているような塩梅で、タンデムベルトを頂点としタンクの尻ひとつ後ろを谷底としたハーフパイプに、体がすっぽり嵌まって動けないのだ。前後の自由は実質わずか3〜4cm。さらに、シート前端の、内腿の当たる(べき)部分が、削ぎ落としたようにえぐれていて、内腿がシートにきちんと接触せず宙ぶらりんとなり座りが悪い。まあ、この天然アンコ抜きシートのおかげで足つき性は極めて良く、ライディングブーツや、靴底の厚いトレッキングシューズを履いていると、身長165cmの自分でもぎりぎり両足同時にかかと立ちできるほどだ。

アンコ盛りは、SV購入当初から既に検討していた。おそらく近辺で唯一の有名なシートカスタム専門店に出すと、漏れなく表皮まで替えられて、出費は2万円以上。その後、パンデミックが起こってからは、年を通じて繁忙期 だそうで、最初の連絡から3週間以上も期間がかかるとHPに書いてある。皆バイクに乗りたがらない真冬の間は納期がさらに長い。そんなこんなでずっと二の足を踏んでいたのだが、サーキット走行会に通うようになって、いよいよ実害らしきものが現れてきた。まだ走りが下手くそなのもあるだろうが、フロントタイヤのサイドばかりが減るのだ。前輪荷重すぎらしい。ついに意を決して、DIYすることにした。使ったスポンジ素材はこれ。元々の本体スポンジと比べればちょっとだけ柔らかい。

  • NTB シート補修スポンジ 250×400×45mm [ST-US1]: 2,100円

写真一番上が After、下が Before。

まず、表皮の上から当たりを採って型紙を作り、別のいい加減なスポンジで試作をして、型紙を補正後に本チャンに挑んだ。アンコは一番厚い谷底部分でも14〜15mm厚の設計にしたので、45mm厚スポンジをまず半分にスライス。料理用の牛刀にシリコンオイルを塗ってやるととても上手くスライスできた。粗形成も牛刀と、同じく牛刀タイプのペティナイフが具合よく、仕上げは当て木を当てたメッシュタイプの#120サンドペーパーで行なった(#80のほうがおそらく良さそう)。

本体スポンジを削りたくなかったため、単体でフォルムを9割がた仕上げてから、シート表皮をタンデムベルトより前だけ剥がして、乾燥時間に少し余裕のあるセメダイン・スーパーXクリアで接着した。この面積でも接着剤はまるまる1本使ってぎりぎりで、本来は2本用意しておくべきだった。接着剤が乾くまでの養生は、スズランテープ(ビニール紐)ぐるぐる巻きで正解。おそらく養生テープだと剥がす時ににスポンジを傷める。1日養生してから、ペティナイフとメッシュサンドペーパーで最終調整。シート表皮は分厚そうでいて意外とボディコンなので、浅い凹凸もけっこう仕上がりに響く。

表皮の戻しは、ほとんどのポイントはMAXのガンタッカー + 足長6mmのステープルで。シートフレームが窪んでいて打ちにくい箇所だけは、外した元のステープル(市販のステープルより線形が太い)を元のステープル跡に手作業(ラジオペンチ)で押し込むことで凌いだ。なので、表皮を剥ぐ時、元のステープルはあまり曲げないよう丁寧に抜いたほうがいい。

表面的には多少波打ちが見えないわけでもないが、シート形状としては自分の理想にほぼ近いものになった。実際に走ってみると、これは! 動ける動ける! 谷底をわずか14〜15mm埋めただけで、楽に前後に10cm以上スムーズに尻がずらせるようになった。おかげで、コーナーリング後半で荷重をリヤに移せる。つまり、シート上で尻が円を描くような動きだ。天然アンコ抜きシートのせいで左右にしか動かない変な癖がついてしまったのでまだギクシャクするが、これか、これなのか。ハンドルとの位置関係も少し変化し、気持ち前傾が増してポジションが向上。内股のエグれによる肩透かしも解消されてしっくり。足つき性の犠牲はほんのわずかだ。マーケティングノイズで歪められなければ本来こういう形状になったのではなかろうか。

もし、もう一度作るとしたら、後半の両サイドは斜面にかかるくらいまで広げ、また、内腿埋めの羽根部分も前方にもう少し尖らせて、本体スポンジとのつながりを自然にしたい。まあ、もう一度作る機会はないと思うが…。