2.12. TCP/IP宛先誘導型ルーティング

ルーティングという面では、 TCP/IP はかなり複雑になってきている。当初は誰もが、宛先誘導型ルーティング (destination driven routing) だけで充分だと考えていた。ところがここ数年で、あっという間に複雑さを増してきた。今日では、 Linux でも、基本的には IP ヘッダのフィールドやビットのどれを基準にしてでもルーティングができるし、そればかりか TCP, UDP, ICMP のヘッダでもルーティングが可能になっている。そうした仕組みをポリシールーティング (policy based routing)、あるいは高度ルーティング (advanced routing) と呼ぶ。

この章は、宛先誘導型ルーティングがどのように行われるかの簡略な説明だ。送信元ホストからパケットを送信する時、パケットが生まれる。すると次に、コンピュータはパケットの宛先アドレスを見て、コンピュータ自身の保持しているルーティングテーブルと照合を行う。宛先アドレスがローカルなものならば、パケットは直接、ハードウェア MACアドレス を使って送られる。宛先がゲートウェイの向こう側だった場合には、パケットはゲートウェイの MAC アドレスへと送られる。するとゲートウェイはパケットの IP ヘッダを読み、パケットの宛先アドレスを知る。宛先アドレスはここでまたルーティングテーブルと照合され、パケットは次のゲートウェイへ送られる...という行程が、宛先のアドレスの属する向こう側 のネットワークに到達するまで繰り返される。

お分かりの通り、この仕組みのルーティングは基本原則だけで成り立つ単純なものだ。高度ルーティングやポリシールーティングになると話は別で、仕組みはもっと複雑だ。例えば送信元アドレスや TOS 値などに基づいてパケットのルーティングを変えたりできるのだ。